令和3年3月3 0日、株式会社防災センター(2社) を被告とする差止請求訴訟について、仙台地方裁判所で判決言渡しがありました。中途解約を した顧客に残余代金の一括払義務を課す条項等の差止めをはじめ、ほとんどの請求が認められました。
<被害の概要>
被告の株式会社防災センターは、主に宮城県や東京で消火器の訪問販売を行っている業者ですが、消火器リースと称して期間10年の契約を締結させ、顧客からの中途解約を制限する条項とともに、やむなく解約をした場合には残余代金を一括して支払うものとする条項、その他リース契約にみられるような顧客に重い義務を負わせる不当条項を多数盛り込んだ契約書を使用しております。そればかりではなく、「全国一有利な料金」 「家庭に消火器を設置することは条例で義務づけられている」などの不実告知や虚偽の内容が書かれたチラシによる勧誘を行っているため、各地の消費生活センターにも多くの苦情相談が寄せられておりました。
<裁判の経緯>
本件の訴え提起後、 当初被告としていた東京都大田区蒲田に本店を置く法人のほかに、 首都圏において、中央区日本橋に本店を置く株式会社防災センター(別法人だが同一名称で代表者も同一人)
が消火器の訪問販売を行っており、東京で同社を当事者とする裁判が行われていることが判明しました。そこで、令和元年12月20日に、同社に対しても差止請求訴訟を提起し、仙台地裁で法人2社を被告として併合審理が続けられました。
令和2年10月27日には、被告らの代表者である森山典英および被告らの勧誘員(従業員)の2名の尋問を行い、被告らの勧誘の違法・不当性を明らかにいたしました。
<判決の概要と意義>
裁判は、本年1月26日に結審し、3月30日に判決が言い渡されました。仙台地裁は、被告らの多数の契約条項及び勧誘や広告が違法不当なものであることを認定して、概要、以下のような判決を言い渡しました(資料1)。判決の概要と意義は、以下の通りです(求めた裁判と判断結果の一覧表を用意しました・資料2)
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1.不当条項の使用禁止
消費者契約法8条ないし10条に基づき、以下の条項を含む意思表示を行ってはならないとして、「契約条項目録」(資料3)記載のような契約条項を使用することを禁じました。
〇顧客が中途解約をした場合には残余料金相当額(10年分の全料金) を一括して支払う条項について、消費者契約法9条1号の適用が認められ、無効の範囲が一部であっても一体の意思表示であることを理由に当該条項の全体の差止めが認められました。
〇被告らは消火器のリース販売という形態をとっているものの、契約の実態は「賃貸借契約と消火器の保守という役務提供契約」が一体となったものであるとして、被告らが主張するリース契約の実態を否定し、リース契約に一般的に見られる借主に重い負担を課す条項(解約制限、消火器の維持管理責任等)は消費者契約法10条等により無効になるとして、
差止めの対象と認定されました。
〇不当条項について、消費者契約法だけではなく、特定商取引法10条1項3号または4号による差止め (解除の際に法定の金額を超える額を支払う義務を負わせる条項について、それを含む意思表示の差止め)も認められました。特商法に基づく不当条項の差止めであり、消費者契約を超える範囲を対象とする差止めが認められたことになります。
2.不当勧誘の禁止
特定商取引法58条の18第1項に基づき、被告らは勧誘に際して以下のような行為をしてはならないとして、被告らによる不当な勧誘を禁止しました。
〇被告らの契約が全国一有利な料金等と告げること
〇全ての消火器に点検義務があると告げること
〇全国の家庭に消火器の設置を義務づける条例があると告げること
不当勧誘の差止めを認めた判決はまだ数が少なく、特商法に基づく訪問販売の差止めで、対象が消費者契約に限られない点でも意義があるものと思われます。
3.広告の制限
景品表示法30条1項1号2号に基づき、被告らが使用するチラシに以下の表示をしてはならないとして、被告らによる不当表示を禁止しました。
〇契約が全国一有利である
〇当該消火器が最高級ブランドである
〇被告が提供する各種サービスは無料である
不当表示の差止めを認めた判決はまだ数が少なく、
先例になるものと思われます。
(資料) 1 判決文
2 求めた裁判と判断結果一覧表
3 契約条項目録
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